ハサウェイの終戦  【機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ】

U.世界観

1.時代背景

 宇宙世紀0093年に「第二次ネオ・ジオン抗争(シャアの反乱)」が終結し、0100年にはジオン共和国が自治権を放棄した事を受けて、地球連邦政府は戦乱の消滅を謳っていました。
 しかし政治の腐敗は相変わらずで特権階級は甘い汁をすすり、一方では地球に住む人々を強制的に宇宙へ送り込み、「ハンター」と呼ばれる組織は不法居住者の虐殺を日常的に行っています。この様な状況下で、連邦政府に対する人々の不満は、スペースノイドのみならず益々高まっていました。

 そんな折、反地球連邦活動を行う組織「マフティー」が現れます。マフティーは衛星軌道上に点在する監視用人工衛星の破壊を皮切りに、政府要人の暗殺を繰り返し続けました。そんなマフティーに対する民衆の人気と期待は非常に高く、密かに支援の動きも広まって行きました。しかし組織のリーダーである「マフティー・ナビーユ・エリン」は謎に包まれた人物で、人々の間ではその正体について様々な憶測が流れています。

 連邦軍は当初、マフティーの動きをそれほど重視しておらず、文官出身のキンバレー大佐に対処させました。しかし実戦経験に乏しいキンバレー隊はマフティーの敵ではなく、いい様に翻弄され続けます。
 ようやく事態を憂慮した連邦軍は、実戦経験も豊富で有能な士官のケネス大佐を宇宙から召還し、マフティー掃討の指揮を執らせる事にしました。

 シャアの反乱から12年が経過し、宇宙世紀も一世紀を超えたU.C.0105。事態は後に「マフティーの動乱」と呼ばれる一連の事件へと発展します。

2.少年は青年に

 初登場時はまだ7歳だったハサウェイですが、『逆襲のシャア』の時には13歳に成長していました。この時のクェスとの感応で見られる様に、ニュータイプとしての素養を見せており、また実際にモビルスーツ(以下MS)の操縦もしています。これはアムロの初搭乗時の15歳を上回る早さでした。
 しかし、初恋の女性であるクェスを殺してしまった(※)事により、彼の人生は大きく変転してしまいます。

 眼前でクェスの死に触れたショックは大きく、彼の心に深い傷を刻み込みました。そのためハサウェイは長期にわたって鬱病を患う事になります。また彼とクェスは、アムロとララァのように死後の交感も出来ませんでした。
 やがてハサウェイは病の治療も兼ねて「植物監察官」の候補生として、研修のために地球へ降ります。その研修先において彼女が出来るなど、徐々に心の傷も癒えて行きました。

 宇宙世紀0105年、25歳になったハサウェイは、所用で一ヵ月ほど宇宙に上がっていました。そして実習場所であるスラウェシ島(現インドネシア領)に戻るため、地球行きのシャトルに搭乗します。
 ここから本作の物語の幕が上がる事になります。
※本作は小説版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の路線を引き継いでいます。映画ではクェス殺したのはチェーンでしたが、小説ではハサウェイが誤射でクェスを殺しています。